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Thule Magazine vol.7
ラグビー選手岸岡 智樹Tomoki Kishioka

ジャパンラグビートップリーグ「クボタスピアーズ」所属。早稲田大学在学中にはスタンドオフとして全国大学ラグビーフットボール選手権11年ぶりの優勝に貢献した。これまで培ってきたラグビーの知識を活かした発信や、固定観念にとらわれない試みも多くのラグビーファンから高い支持を集める。ラグビーサークル「岸岡智樹のラグビーラボ」を運営。

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ラグビー界の
新たな
成功例になる

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学生から社会人になって変化したこと

昨年、早稲田大学として大学選手権を優勝し、クボタスピアーズに社員選手として入団。現在はどのようなスケジュールで生活されているのでしょうか。

-午前に出社してから午後が練習、一日全て練習、一日全て出社の3パターンがあります。一日全て仕事の日が一日、半分ずつの日と一日練習の日がそれぞれ2日ずつあります。

元々柔軟な発想や思考が注目されてきた選手かと思います。社会人になってから意識が変わったことはありますか?

-学生の頃と社会人になってからでは、同じ学びだとしても必要度が変わったなと感じています。学生の頃はテストで何点取ってもよかったところを、仕事では100点をとる努力をしなければならない。それを実務に置き換えて「ミスしてはいけない」と考えると、正確性がかなり求められてるのでそういった点が意識として変わったところかなと感じています。
ラグビーでは仲間や監督、スタッフ陣と意見を交換し、コミュニケーションをとるという点に影響を受けているかもしれません。所属している部署の性質上、作成した書類や資料を最終的に誰かに見せるタイミングがあるので、誰かと一緒に作業をするときに必要な「伝える」ということがラグビーと共通しているなと感じています。

クボタスピアーズに進む理由となった「可能性」と「柔軟性」

クボタスピアーズを選んだ理由は?

-まとめると「柔軟性」と「可能性」が理由です。柔軟性については、いろんなことをやりたいという選手や部員の思いをできるだけ実現可能にしようと協力してくれるところ。可能性については、ラグビー選手としてのレベルアップに加えて、人としての成長を感じられる所があると感じたのが1番の決め手でした。入ってからも確かな実感が持てています。
特に柔軟性については、やりたいことを全て前向きに捉えてくださっています。会社のCMで使われているキャッチコピーに「壁がある、だから行く」というものがあるのですが、僕ら選手一人一人が壁と思ったこともチームがバックアップしていこうという気持ちを感じます。ラグビーのプレー以外のところもとても手厚くサポートしていただいてます。

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社員選手としての目標

最初からプロにならなかったのはなぜだったのでしょうか

-まだラグビー選手という仕事を信じていなかったからです。自分がラグビーをしてお金をもらうことと、ラグビーをする理由がリンクしていなかった。それならば社業で働いてお金をもらいつつ、ラグビーも一番高いレベルでできたら良いなと。それに加えて純粋にちゃんと働いてみたかったという理由もあります。なので会社員という肩書を一年目から外すという選択肢はありませんでした。

社員選手としての目標はありますか

-個人として「新しいラグビーの成功例となる」という夢を掲げています。それは、最初からプロの道に進んだら叶えられないと思ったんです。社員選手という肩書で何かをやっていることが今自分が掲げている夢のステップアップに必要なことだと思うので、社員選手として競技と社業を頑張りながら、まだ誰もしていないことをしていく。今は夢に向かって種を蒔いているようなイメージです。
直近の目標では2021年1月のトップリーグ開幕戦でスタンドオフとして10番を着ること。長い目標のためのファーストステップはそこだと思っています。2023年のW杯、そこが自分のラグビー選手としての一つの節目になるのではないかと思うので、ワールドカップは社員選手としても追いかけたいと思っています。

「ラグビー界の新たな成功例となる」という夢に込められた想い

「ラグビー界の新たな成功例となる」という目標はいつから思い始めた?

-大学を卒業したくらいから漠然と思い始めました。4月から6月はずっと自宅にいたので、本当に時間がたくさんあって、その間に言葉にしました。成功の基準は人それぞれですが、ラグビー選手やアスリートの成功とは子どもに夢を抱かせることだと考えています。それに加えて、たくさんの人に他とは違う価値観の成功を届けることができればいいなと思っています。
例えば、ラグビー界でこれまで多くの人が1人で1個しか作れなかった成功を、1人で10個作れたらそれは確実に新たな成功例だと思っています。そしてそれを見た僕より10個歳下の子ども達が1人2個ずつでも新しい成功例を作るようになったとしたら、日本ラグビー界の未来にとても大きな影響を与えると感じているんです。
世界で見ると僕と同じ年齢でも国のど真ん中でプレーをして活躍している選手がいます。それを見て「この選手みたいになりたい!」という子どもがたくさん出ているのですが、日本では相当飛び抜けてないかぎりまだまだ難しい活躍の仕方です。たとえそうだとしても、今ならば競技以外でもいろいろな活動ができるので、自分自身に付加価値をつけることはできる。だからこそ、「新たな成功例となる」という夢に向かっていろいろなことをしている感覚です。僕はいろんなことを同時にできるタイプだと思っているので、それも自分の強みにしていけるのではないかと考えています。

ご自身の中でプレッシャーはないのでしょうか

-かなりあります。ですが、誰かから「やれ」と言われたことではなく自分で決めたことなので、極論を言えば「すみません、もうできません」の一言で辞めることもできる。だからこそモチベーションが湧くというか、プレッシャーをより良いモチベーションに変えられているんじゃないかと思いますね。

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トップリーグでプレーすることによって得た自信と確信

練習試合では3戦連続スタートメンバーとしてフル出場をしましたが、社会人として臨む試合に学生の頃との違いはありましたか

-違ったものは2つあるのですが、1つ目はスタンドオフとして考えることが楽になりました。トップリーグは学生の頃と比較してフィジカル面のレベルも圧倒的に上がっていますし、プレーの質も高くなっている。スタンドオフというゲームをコントロールするポジションをする中で、次に何をしたらいいかということや、試合を逆算して勝つためにどうすれば良いのかということを考えるときに頭がとてもすっきりしているんです。学生のころにはプレーの中で一喜一憂したり、一か八かで考えていた自分がいたのだなと社会人になってから気づきました。
2つ目は、試合に出場できたことで発信にも自信がついたことです。半年間、新型コロナウイルスの影響でプレーを外部の方に見ていただく機会がない中で、様々な発信をしてきました。それによって「口ばっかだったよね」と結果的に言われてしまうのではないかというプレッシャーがあったんです。今、試合に出れるようになったことでプレーをお見せできる機会ができて、発信してきたこととやっていることがリンクしている実感と自信を持てた点が変わりました。

ラグビーという競技の立ち位置も上げていける選手に

今と未来のラグビー界の課題について何か感じていることはありますか

-ラグビーW杯でラグビーを知った方は増えたと感じるのですが、実際にどれだけの方が会場に足を運んでくれるのかなと考えています。ラグビーはグラウンドで見てこその競技だというふうにも思っているので、足を運んでくれる方が増えて欲しいなと思っています。ラグビーは野球やサッカーに劣らないスポーツだと思っているので、テレビでの放送も今後さらに増えて欲しいです。そのためにはラグビー選手がかっこいいと思われなければいけない。自分の歩み方でかっこいいと持っていただける「ラグビー選手」という職業を確立したいなと思います。ラグビー選手という職業が認められれば、自ずと野球やサッカーのような立ち位置になっていける。とても難しいことではありますが、そこを目指して力を注いでいきたいです。

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社業とアスリートをクロスオーバーできる納得のデザインと機能性

岸岡さんにとって、THULEのバッグはどんなところが魅力でしょうか

-機能性とデザイン性です。最初はパソコンをダイレクトに入れられることや、メガネやサングラスなどの貴重品を安全に収納できる点が面白いなと思ってました。いざ使ってみると中の収納の多さに驚きました。「たくさん入ります」というカバンはあっても、「収納しやすいです」というバッグとは出会っていなかったなと。それも、ただたくさんポケットをつければ良いという話ではなくて、ここにはこれを入れるべきという配置もちゃんと考えられている。何も考えずに入れるべき場所に収納するだけで良いので、荷物の定位置が決めやすく機能性が高いなと使っていて感じます。さらに言うとどこのポケットに何が入っているべきかが分かるので、そこにそれがないと不自然なんです。そうすると「あれ、ここに何も入ってないぞ?」と気付くので忘れ物を防止できるときもあります。
デザインも良いので、チームや会社でも「おしゃれだね」と声をかけてもらえる機会があるのも嬉しいですね。一選手として個性も出したいので、人とかぶらないところも嬉しいところです。
僕の場合はパソコンと書類だけではなく練習用具も持ち歩くんですが、今使っているこのバッグは仕事の荷物と一緒にちょっとした練習用具も入る。そのおかげで練習用のバッグをもう一つ持ち歩く必要がない日もできました。容量が大きいのでパソコンの2台収納できますし、ちょっとふくれてもダサくならないデザインが気に入っています。

すべてを「主」と捉えチャレンジしていく

今後の目標は

-新たな成功例となる「枝」を増やしていきたいなと思っています。例えると、1本の柱を持つのではなく、1%の柱を100本持ちたいなと。副業と言われるものも「主」があっての「副」という考え方ですが、そうではなくてすべて「主」として考えたいんです。社員選手なら社業と競技でそれぞれ100%でやる。どちらかが「主」でどちらかが「副」という考え方ではないので、そういった言葉のニュアンス一つとっても気を付けていきたいなと。もちろん社業と競技以外で活動することも全て同じ感覚です。今やっている活動や新しく始めることの優先順位もどんどん上げていきたいと思っていますし、一番は自分が満足できるようにやること。ここを貫いていきたいです。

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