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Thule Magazine vol.16 俳優/映像クリエイター/ダンサー山根 和馬Kazuma Yamane

2003年から芸能活動をスタート。2008年から5年間、DA PUMPのメンバーとしてアーティスト活動を行ったのち、活動の中心を俳優へと移す。俳優として活動しながら、ショート動画コンテンツ「純悪」や「おじさんとわたし」、「えりはる」、「頑張れコウヘイ君」など数多くの作品のディレクションから出演、撮影、編集を行う。子どもたちとダンスを通じてコミュニケーションの輪を広げる活動「ダンコミプロジェクト」も手がけるなど、その活動は多岐にわたる。

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どうなりたいかではなく
どうありたいか
これからも続く挑戦と発見

山根さんは現在、様々な活動をされていますが、職業はなんと表現するのが適切でしょうか

-俳優もやっていて、映像も作っていて、ダンサーもやっているので…自分でも職業が決まっているような感覚がないんです。「やりたいことが職業」という感覚です。今の活動の大部分は映像を作ることですが、映像クリエイターとしてTikTokやYouTube、Instagramは作ったものを載せる場所でしかないので、そこに載せるものを考えること、作ったものをどこにどのように載せるかを考えることがメインです。

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始まりのコンテンツ「純悪」を始めようと思ったきっかけは

-役者として求められる役を演じて出演すること以外に、自分が「ああしたい」「こうしたい」と思うことを形にしたかったからです。役者は基本的にもらう役の中でしか表現できない。怖い役だったら怖い一面だけが前に立つことが多い。でも、怖い人にもいろんな一面があるじゃないですか。笑ったりもするし、優しい一面もある。そういう面を自分から発信して、そこから役者として新しい広がりが生まれればこれまでとは違う道が見えてくるかなと考えたことがきっかけでした。

山根さんのスタイルはコンテンツの内容から撮影、編集までを全てご自身が中心になってやられていますね

-脚本と台本を書いて、出演して、撮影して、編集して、投稿する。すべてをワンオペでやっています。最初にショートムービーを作りたくなってから「作るにはどうすればいいんだろう」と考えたんです。「カメラがいるな」「編集も必要だな」「出るのは自分でいいな」と考えていく中で、当時は周りにそれを実現するためのカメラマンも編集する人もいなかったので、まずは自分でやるしかないなと始めました。

純悪以外の3つの作品にはそれぞれテーマがあるのでしょうか

-ひとつひとつテーマはあります。「えりはる」は女の子同士の女子あるあるに着目して、男子が見ていないときに思っていることや動きを意識して作っています。「おじさんとわたし」はZ世代の女子高生が思っていることや疑問に感じることをおじさんが対話して解決していく構成です。やはり世代間で思っていること全然違いますし、キャストの奥田こころには常に日頃思っていることをメモしておいてもらうようお願いをしています。作品の基盤になるそのメモが送られてきて、そこから台本と脚本を僕が考えていく感じです。「頑張れコウヘイ君」はコウヘイ君というキャラクターが、女性のわかりそうでわからない所作に悶々とする様子を描いていて、これは武田航平という役者と一緒に考えています。

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純悪ではシンプルに楽しめるコミカルな内容のものと少し考えさせられる内容のものがありますが、意図して作り分けているのでしょうか

-いいことをしたいと思っているわけではなくて、自分の人生の中で出会った人や感じたことを通して作りたいと思ったものを作っているという感覚です。作品の受け取り方は相手が決めることですが、自分としてはいいことをしていいねをもらいたいわけではないんです。ヘルプマークの動画も、おぐりんさんという人と出会ったから作る動画のイメージが思いついたというだけ。僕が日頃からヘルプマークの普及活動をしているわけではなくて、普及活動をしているおぐりんさんという人と出会って、その人と何かを作りたいなと思ったから作った。なのでどんな作品を作っていても感覚は変わらないですね。

作品の着想やアイデアはどういったところから来ているのでしょうか

-日頃から思っていることを常にメモしておいて、それをどういう風に作品にしようかなと考えています。テーマをざっくりまとめるとするならば「生きていて感じる疑問」です。みんなが当たり前と思っていることが本当に当たり前なのかなと感じたときに、それが些細なことであればあるほど意外とみんなの共感を呼ぶというか。あとは、例えばムカつくことがあったときに、その感情をそのまま言葉で呟くとトゲになってしまいますけど、作品にして「これってどう思う?」と疑問で投げかける。そうすることによって誰も傷つかないですし、見た人に考えてもらえる。純悪の作品では「これが正しいよね」と言うことはやらないんです。答え合わせをコメントでしてもらって、勝手に争ってもらう(笑)。それでいいと思ってます。「これが正しいんだよ」なんてものはいらなくて「どうなんだろう、これ」と思わせることが大切だと思って作っています。

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すべてご自身でやられることに苦労などはありませんでしたか

-苦労はしたことないですね。やりたいことをやっているときの感覚は「苦労」ではないじゃないですか。ずっと「楽しい」って気持ちしかないです。それに、役者として現場に行っているので撮り方も大体わかりますし、何もないところから始めたわけじゃないんです。映像の編集もYouTubeを見て学ぶことから始めましたが、動画の編集は勉強してすぐ試せるところが楽しい。すべて自分で始めて自分で責任を持ってやっていることなので、なんでも試せるんです。もともと自分の人生の舵は自分で取りたいタイプなので、今の状態はあっているなと感じています。何か自分が挑戦しようと思ったときに、自分で責任を持つ形をとればなんでもできる。そこは大事ですよね。

山根さんがやっていることは周囲にも影響も与えているのではないでしょうか

-受け身でいることに疑問を持ち始めている周りの役者からは「和馬たち何してるんだろう?」という見られ方をし始めたんじゃないかなと思います。ドラマの現場に行っても「見てるよ」と言っていただけるようになりましたし、純悪にドラマのオファーが来たりもしています。今までのテレビ業界はどこかSNSを下に見ているような節があったかもしれないですが、そのバランスが逆になっているんじゃないでしょうか。
僕個人の話でも最近だとお父さんの役とかをいただきますし、純悪を始めたことからオファーが来る役の幅も広がりました。純悪の2人は見た目は悪い格好をしていますけど、内容は全く悪いことをしていない。「こういう人にお父さんの役をやらせても面白いかも」と思う人が徐々にオファーしてくれるようになって、役者としての可能性を広げていくという最初の狙い通りにもなっているかもしれません。

役者というお仕事を尊敬されているというお話も伺いましたが、どんな点を尊敬されていますか

-やはり表現する技術ですね。自分たちは当たり前にやっていますが、ひとつの立派な技術だと思っています。ですが、映像業界では「役者は芝居ができて当たり前」みたいに思われていたりする。売れてるか売れてないかとか、大きい役か小さい役かとか、判断されてしまう材料はいろいろありますが、小さい役をやっていたとしてもみんなプロ意識を持ってやっているんですよね。売れてる人ももちろんすごいですが、売れてない人の中にも魅力的な人はたくさんいます。単純に考えると「出てないだけ」なんです。

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SNSツールを使い始めてから役者という仕事の捉え方も変わったのでしょうか

-変わりましたね。昔は「自分に能力がない」とか自己否定をしていましたけど、評価されなかったのは単に自分にあっていない場所だったというだけで、自分にあってる場所を見つけてちゃんと自分のいいところをアピールすれば認めてもらえるんだと実感しました。SNSツールを使い始めてから、新しく表現する場所が見つかったことはよかったですね。
これから役者という仕事がもっとリスペクトされるようになって欲しいですし、そのためにもSNSツールを使って魅力のある新しい人たちを発掘したいというか、世に出していくということもしたいんです。

THULEをバッグの使い心地はいかがですか

-めちゃくちゃいいですよ。いろんな機能やポケットがあったりするので、「これはこうやって使うんでしょ」と作った人の想いを受け取って攻略していくような感じが男心をくすぐりますよね。
THULEのバッグは小さいものと中くらいのカメラ専用のもの、大きいものと3つのサイズを持っているのですが、ひとつひとつ形も用途も違うのでシーンによって使い分けています。カメラバッグじゃない小さくてマチが薄いバッグはよく現場に持って行きます。荷物が少なくて大きいバッグを使いたくないときに重宝するんですよね。
他の2つに関してはデザインの男らしさと荷物がめちゃくちゃ入るところがいいですね。僕は演者とカメラマンの2人分の荷物をバッグに入れて持って行かないといけないのですが、それができるのは嬉しいです。見た目がかっこいいから何を着てもハマりますし、デザインも気に入っています。カメラの機材はけっこう大変な量になるし重いので、安心して収納できるという点はバッグにとても大事だと感じているんです。現場では突然雨が降ったりもしますし、そういった心配がいらないとか、荷物がしっかり固定できる点はとても大事じゃないかなと思いますね。もともとカメラの扱いを勉強しているわけではないので、カメラの扱い方もダメなところはダメだと思うんです(笑)。それでも安全なバッグに入れておけば大丈夫だろうと安心して使っています。

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今後の目標や展望はありますか

-よく聞かれるのですが、自分的には何かになるのではなくどういう自分でありたいかという感覚を大事にしています。自分の場合は「人に何かプラスになるような人間でありたい」と思って生きているので、正直、今の自分の生き方で満足しているんです。今やっていることを続けていったら、自分が思ってもいなかったようなもっとすごい形になっていくんだろうなという実感があるので、それもとても楽しみです。なので今はやりたいことをやっている分、目標とかはないです。昔は「今のままじゃダメだ」と思っていましたけど、それもなくなりました。これからは先ほども話したように、もっと役者がリスペクトされて、そのリスペクトがしっかり還元されるような環境を作っていきたいなと感じています。いろいろなことにチャレンジしてきて、これまでの考え方を成立させるために今の考えに行き着いてるような感覚です。